僕が不登校になったのは、小学4年生の11月頃でした。
前日までは普通に行けていたのに、なんだかその朝は行く気が起きなくて。
母親に「頭が痛い」なんて嘘をついて、学校を休みました。
ああ、自分はなんてことをしてしまったのだろう。
とりあえず罪悪感がすごかったことを覚えています。
学校に行くことが "当たり前" で、学校に行くことが "普通" なのに
どうして自分はそれができなかったのだろう。
どうして自分は普通にできないのだろう。
その日学校にいけなかったのには、いくつか理由がありました。
当時、学校では鬼ごっこが流行っていました。
僕自身運動神経は悪い方ではないし、走ることも嫌いじゃなかったので
いつも一緒にいる子達__所謂イツメン__と鬼ごっこをしていました。
そんなイツメンの中には、僕が小学2年生の頃から想いを寄せていた男の子もいました。
足が速くて、サッカーが上手で、かっこよくて、ぶっきらぼうだけど本当はすごく優しい素直じゃない子。
とにもかくにもその子の子とが好きで好きでたまらなくて、その背中をずっと追いかけていました。
だけど上に書いたように、足も速いしサッカーも上手いし、おまけにかっこいいときた。
彼は僕だけじゃなくて、いろんな女の子の注目の的でした。
僕は多分、当時彼と一番距離が近い女の子だったと思います。
登下校も一緒、放課後や休み時間は毎日のように一緒に遊んで、移動教室のときも一緒に移動していました。
小学4年生って子供に見えて、案外独占欲の塊だったりするもので。
いつの間にか僕は、彼のことが好きな女の子から敵意を向けられるようになってしまいました。
イツメンの中にも彼を好きな女の子が二人くらいいて、その子達がけしかけたのかはわかりませんが、
僕はいつも鬼ごっこで鬼にされていました。
男女7人VS僕。
そんなの勝ち目なんてあるわけがない。
もう無理だ、限界だといくら泣いても、鬼ごっこを中断してはくれませんでした。
その時鬼ごっこから離脱して逃げればよかったのかもしれませんが、逃げるのは恥だと思っていました。
それになにより、好きだった子に幻滅されるのが嫌だったんです。
鬼ごっこは休み時間ではなく、何故か放課後に行われていました。
とても時間が長い放課後に。
5時のチャイムがなるまでね、と念を押されて、2時間ほどぶっ通しで走り回ったこともありました。
とても辛かったです。
それがイツメンで遊ぶ度に起こるので、僕は日に日にイツメンから孤立し始めました。
きっとその頃にはもう、心が限界を迎えていたのだと思います。
そしてもうひとつ。
僕は所謂 "いじられ役" で、クラスの中でいつもいじられる立場にいました。
朝教室のドアを開けるとクラスの目立つ男子がわらわらと寄ってきて、
馬鹿だの気色悪いだの学校来るなだの暴言を吐かれたりすることがしょっちゅうでした。
誰かに吐き出すこともできず、一人で抱え込んで悩んで。
独りぼっちが苦しくて、怖くて、夜になるといつも怯えて。
周りは、大したことじゃないと思うかもしれません。
だけどその本人からすると、とてもしんどいことだってあります。
持てる重りの重さが人それぞれ違うように、人それぞれ背負っていられるものには違いがあって。
僕は背負えるものが、きっとそこまで多くなかったんだと思います。
色々なことがあって、何かがぷっつん切れてしまったのかもしれません。
こうして僕は、一日だけと思いながらずる休みをしました。